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重賞ウイナーINFORMATION

  • サラ系3歳 OP
  • ダ2000M
  • 天候:晴
  • 芝:良

ヒカリオーソ

戦歴 11戦4勝 生産者 (有)ヒカル牧場 馬主 西森鶴
調教師 岩本洋 騎手 山崎誠士

取材ノート

 南関東所属の3歳馬たちが一生に一度の夢舞台に挑んだ「東京ダービー」。羽田盃の1・2着馬ミューチャリーとウィンターフェルが人気を背負う中、羽田盃不出走ながら3番人気に支持されたヒカリオーソが早め先頭からそのまま押し切り、第65代東京ダービー馬に輝いた。

 ヒカリオーソの生まれ故郷は、新冠町のサラブレッド銀座に牧場を構えるヒカル牧場。古くは南関東三冠を制したのちに中央競馬へ移籍し、1968年の天皇賞(春)と宝塚記念を制したヒカルタカイを生産。グレード制導入後も、1998年のダービーグランプリ(G1)を制したナリタホマレや、2010年の全日本2歳優駿(Jpn1)優勝馬ビッグロマンス、2013年のNHKマイルカップ(G1)で見事な差し切り勝ちを見せたマイネルホウオウなどのG1馬を輩出。そしてヒカル牧場生産馬といえば、笠松所属のまま中央競馬の芝レースに挑戦をつづけ、1995年の桜花賞(G1)で1番人気に支持されたライデンリーダーの勇姿を真っ先に思い起こすファンも多いだろう。

 「忘れられかけた頃に、またこうしてライデンリーダーの名前が注目されるのは本当にありがたいことです」と話すのは、ヒカル牧場の吉田忠夫さん。ヒカリオーソの祖母マイムーンはライデンリーダーの半妹にあたり、そのマイムーンが生んだ唯一の牝馬がヒカリオーソの母ヒカリヴィグラス。ヒカル牧場が手塩にかけ、大切につないできた血統であることは疑いの余地がない。「この牝系でうちの牧場に残っているのはヒカリヴィグラス1頭だけなんですよ。そこからダービー馬が出てくれて、こんなに嬉しいことはありません」と吉田さんは顔を綻ばせる。

 今回の東京ダービー制覇に吉田さんが特別な感情を寄せるのには、もうひとつの理由があった。「うちの牧場はもともと農耕馬を生産していたのですが、昭和23年頃から軽種馬(アラブ)の生産を始め、昭和38年に初めて導入したサラブレッドがホマレタカイという繁殖牝馬だったんです。そのホマレタカイが産んだ初仔のヒカルタカイが、史上初の南関東三冠馬となってくれたんですね。うちの牧場名もヒカルタカイにちなんで命名されたものですし、それ以来(52年ぶり)の東京ダービーですから、本当に感慨深い勝利でした」と、ヒカル牧場の歴史とヒカリオーソを結ぶ素敵なエピソードを明かしてくれた。

 1歳10月までヒカル牧場で健やかに育ったヒカリオーソは、新冠育成公社での育成期間を経て、川崎の岩本洋厩舎に入厩。2歳7月にデビューし、初勝利は3戦目の川崎1500m戦。秋には2歳重賞の平和賞(船橋)で、のちに牝馬二冠を獲得するトーセンガーネットの猛追をしのいで逃げ切り勝ちを収めている。3歳になってからもニューイヤーカップ(浦和)2着、雲取賞(大井)優勝と重賞で好走をつづけ、当然クラシックの主役になると目されていたが、1番人気に推された京浜盃(大井)でまさかの14着敗退。立て直しを図るため、一冠目の羽田盃は回避することになった。「デビューした頃はまだ腰があまく、ゲートの出もよくありませんでした。レースを重ねてそれも解消されてきたのですが、京浜盃は究極に仕上げすぎてしまったようですね。オーナーの英断で羽田盃をスキップし、万全の状態で東京ダービーに出走できたのが功を奏したのだと思います。岩本先生も、自信たっぷりで東京ダービーに臨めたようです」と、デビューから東京ダービー制覇までの軌跡を振り返ってくれた。

 その東京ダービー優勝の歓喜に包まれる約1か月前の4月29日、ヒカル牧場ではヒカリオーソの半弟(父トゥザワールド)が誕生している。「ヒカリヴィグラスは仔出しの良い繁殖牝馬で、今年生まれた牡馬も素晴らしい馬体をしています。キングカメハメハ産駒のトゥザワールドが父ですから、骨量もあって大きく成長してくれそうですね。ヒカリオーソの1歳下にも父ベーカバドの牡馬(マイネルイリャルギ)がいるのですが、こちらはすでに入厩し、夏の札幌競馬でデビュー予定だと聞いています」とヒカリオーソの弟たちを紹介してくれた。「今年はヒカリヴィグラスにミッキーロケットを交配しました。ここのところ牡馬がつづいているので、将来この牝系をつないでいってくれる牝馬が生まれてくれると嬉しいのですが…」とお腹の仔にも期待を膨らませている。

 「今後どんなローテーションを歩んでいくか分かりませんが、とにかく無事に怪我なくレースをつづけてほしいです」とヒカリオーソにエールを送る吉田さん。父フリオーソ、母の父サウスヴィグラス、近親にライデンリーダーと、地方競馬ファン垂涎の遺伝子を持つ東京ダービー馬の未来が、明るく光り輝くものであってほしいと願う。