HOME > トピックス > 重賞ウイナーINFORMATION > ピクシーナイト
戦歴 | 3戦2勝 | 生産者 | ノーザンファーム | 馬主 | 有限会社シルク |
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調教師 | 音無秀孝 | 騎手 | 福永祐一 |
このシンザン記念(G3)で、モーリス産駒では初めての重賞制覇を果たしたピクシーナイト。その勝利は、育成を手がけてきたノーザンファーム早来の桑田厩舎にとっても、待ちに待った勝利ともなった。
「厩舎を任せていただいてから3年目にして、育成馬では初めての重賞勝利となります。思うような結果が出せなかった中でも、信頼していただいた関係者の皆さんに、少しでも恩返しができたのではと思います」と桑田裕規厩舎長は感無量の面持ちで話す。
育成馬ではタイトルに手が届いていなかったものの、調整を任せられた馬では既に重賞勝ちを果たしていただけでなく、昨年のデイリー杯2歳S(G2)でも育成馬のホウオウアマゾンが、勝ったレッドベルオーブとアタマ差の2着に入着していた。
「この3歳世代も素晴らしい馬を任せてもらいましたが、その中でも馬体のバランスの良さだけでなく、乗った時の印象も良かったのが、当時のピクシーナイトでした。気性も良く、乗り役を選ぶことも無い優等生でもありました」
調教を重ねていく中で力強さも出てきたピクシーナイトは、若いスタッフでは折り合いに苦労するようになり、桑田厩舎長が自ら騎乗をしていくようになる。入厩に向けて日に日に動きは良くなっていき、坂路の時計も詰めていった時のあるエピソードが、桑田厩舎長にその後の活躍を予感させた。
「坂路の頂上で一気に傾斜が増していくときに、更に仕掛けてみたのですが、ピクシーナイトは抜群の反応を見せたどころか、時計もそれまでのラップから1秒以上も詰めていました。こんな動きと時計が出る馬はそうそういないですし、共に働くスタッフには『この馬は重賞を取れるのかもしれない』と話した程です」
その高い評価は、移動先となったノーザンファームしがらきでも変わらなかった。知り合いのスタッフからは、「自分が手がけたこの世代の馬では、3本の指に入る」と言われただけでなく、入厩先となった音無厩舎の調教助手からも、期待のコメントが聞かれるようになっていった。
桑田厩舎長が期待と不安が半々でしたと話すメイクデビューを、見事に勝利したピクシーナイトだったが、次走の秋明菊賞はゲートのタイミングが合わず、後方からのレースを強いられる。上がり最速の脚を使って追い込むも、逃げた馬を捕らえられずに3着に敗退した。
「悪いところが全部出たようなレースだったので、負けたことにショックはありませんでした。その後、厩舎サイドやしがらきでもゲート練習を入念にやってくれましたし、1つ1つの修正をしてくれたことが、勝利を引き寄せたのだと思います」
前走よりマイナス2kgでの出走となったシンザン記念ではあったが、桑田厩舎長の目には、これまでのレースの中でも最も引き締まっているように見えた。
「パドックを周回する姿を見ても、しっかりとした調整が行われ、レース経験を重ねてきたこともあるのでしょうが、更に競走馬らしくなったように見えました」
好スタートから主導権を握ったピクシーナイトは、そのまま後続勢に影を踏ませること無く、ゴールへと向かっていく。レース後には鞍上の福永祐一騎手から、「G1を勝てる能力を持っている」との言葉も聞かれたように、着差以上の強さを見せた重賞勝利となった。
レース後間もなくして、桑田厩舎長のスマートフォンには「おめでとう!」と告げる着信が相次いだ。
「今までに無いような連絡をいただきました。本当に嬉しかったです。ただ、この結果に満足することなく、更に育成馬の成績を伸ばしていきたいです」そう話した桑田厩舎長は、こんな裏話を聞かせてくれた。
「今、自分が管理を任せていただいている厩舎で管理されていたのが、父のモーリスでした。その意味でもピクシーナイトの活躍は縁があると思えますし、父のように更なる活躍も期待しています」